イランへの圧力強化と、エネルギー・物流をめぐる世界の動き
今日はホワイトハウスから新しい大統領令や覚書などの大きな発表はありませんでしたが、いくつか気になるニュースが出ています。
まずイランとの戦争について、トランプ大統領の発言が注目されています。トランプ大統領は、イラン戦争について自分がやっていることは概ね正しいと思っている一方で、自問自答する部分もあるというような発言をしています。ただ、中間選挙に向けてもイラン戦争を避けるのではなく、自分の外交・安全保障政策として前面に出していく考えのようです。
イランを経済面からも締め上げるアメリカ
アメリカは、イランを支援するネットワークへの追加制裁も発表しています。フーシ派やヒズボラなど、イランと関係の深い組織に流れる資金や物資の供給網を対象にしています。
この取り組みが「Operation Economic Outcast」です。軍事攻撃だけではなく、経済的にもイランを孤立させ、支援ネットワークを断っていこうという動きです。
さらにイランの核問題についても、IAEAを通じて国連に持っていく動きが進んでいます。ですから現在のアメリカは、軍事攻撃、経済制裁、核問題をめぐる外交圧力という三つの方向からイランに圧力をかけているように見えます。
フーシ派が押さえる紅海側の重要地点
今、中東で気になるのがフーシ派の動きです。イエメンのモカというところに重要な港があるのですが、ここをフーシ派が押さえたというニュースが出ています。
地図を見ると、モカは紅海側にあります。ここから北へ進むとスエズ運河があり、その先はヨーロッパです。世界の海上輸送のかなり大きな部分が通る重要なルートです。
一方、ペルシャ湾側ではイランがホルムズ海峡に大きな影響力を持っています。つまり中東の東側ではホルムズ海峡、西側では紅海につながる重要な海域が不安定になっているということです。
これが長引けば、石油だけではなく、食料や工業製品など世界の物流全体にも影響してきます。中東の戦争が、単に中東だけの問題ではなくなってきているわけです。
イランを見る時には国民の状況も見ておきたい
日本のSNSやYouTubeを見ていると、「トランプ大統領は駄目だ、イランを応援しよう」というような意見もかなりあります。
ただ私は、少し一面的な見方ではないかと思っています。もちろん、だからといってアメリカが他国を攻撃していいという話ではありません。ただ、現在のイラン国内で国民がどのような状況に置かれているのかも見ておいた方がいいと思います。
今、バレーボールの大会に出ているイランの選手が、オーストラリアへの亡命を希望したという話があります。ところが、亡命すれば家族に危害を加えると脅され、家族を人質のような状態にされたため、結局イランへ帰国したということです。そして帰国後、その選手が厳しい扱いを受けているという話も出ています。
こうしたことを見ると、イラン政府とイラン国民を同じものとして考えるのは違うと思います。実際、イランから国外へ逃れた人たちが、自分たちの国で何が起きているのかを訴える活動もしています。
アメリカとイランの戦争を見る時には、「どちらの国が正しいか」という単純な二択ではなく、イラン国内の人たちがどのような状況に置かれているのかというところまで見た方がいいと思います。
データセンターの問題は「電気をどう作るか」へ
次は、以前からお話ししているアメリカのデータセンター問題です。
AIデータセンターを作ろうと思うと、大量の電力が必要になります。しかし今のアメリカでは送電網が大きな問題になっていて、大型変圧器も不足しています。変電所を作ろうとしても莫大な費用と時間がかかります。
つまり、データセンターの建物を完成させても、「そこへどうやって電気を持ってくるのか」という問題が残るわけです。
そこでトランプ政権は、データセンターに関する環境規制を緩和し、データセンターの近くに発電設備を作りやすくしようとしています。特にガスタービンによる発電設備を設置し、送電網だけに頼らず、自分たちで電力を確保する方向が出てきています。
これは投資をしている方にとっても、一つの注目点だと思います。ただ、だからといって慌てて株を買うということではありません。これから何が必要になるのか、どんな企業がその問題を解決しようとしているのかを調べてみると面白いと思います。
南米の麻薬組織への攻撃は単独行動を控える方向へ
アメリカは中東だけではなく、南米の麻薬組織に対しても軍事的な攻撃を行っています。
ただ、これについては「アメリカが他国の地域で勝手に攻撃していいのか」という批判も強くなっています。
そこでルビオ国務長官は、麻薬密輸組織への対応について、同盟国などの承認なしに一方的な行動を取ることはしないという姿勢を示しています。
アメリカは今、モンロー主義を思わせるように、西半球――北アメリカ大陸と南アメリカ大陸――で経済的にも軍事的にも影響力を強めようとしています。ただ、そのやり方については周辺国との調整も必要になってきているということです。
和平を探りながら攻撃を続けるロシアとウクライナ
そしてロシアとウクライナです。トランプ大統領とプーチン大統領の間では、電話会談などを通じて、和平への動きをもう一度進めようとしています。
ただ、話し合いをしながらも実際には攻撃し合っています。ロシアはウクライナのショッピングセンターなど民間施設を攻撃し、一般市民にも犠牲者が出ています。
一方でウクライナは、ロシアの石油精製施設や天然ガス関連施設への攻撃を続けています。
特に最近は、かなりロシアの奥深くまでドローン攻撃が届くようになっています。ヤマル半島周辺など、北極圏に近いエネルギー関連地域まで攻撃対象が広がってきています。
日本も過去にロシアの北極圏における天然ガス開発に関わってきました。北極海を通って日本へエネルギーを運ぶルートも考えられていましたので、こうした地域で攻撃が起きることは日本にとっても全く無関係ではありません。
今の戦争はインフラそのものをめぐる戦い
今日のニュースをまとめて見ると、今の戦争は単に兵士や軍事施設だけを攻撃するものではなくなっていることがよく分かります。
イランに対しては金融や物流のネットワークを止める。フーシ派は世界の海上物流にとって重要な場所を押さえる。ウクライナはロシアのエネルギー施設を攻撃する。そしてアメリカ国内では、AI競争を支えるためにデータセンターの電力をどう確保するかが大きな問題になっています。
石油、天然ガス、電力、物流、金融、データセンター。こうした社会を動かすインフラそのものを誰が押さえるのかということが、今の国際情勢を考える上で非常に重要になってきています。
ニュースを見る時にも、「どこが攻撃されたのか」だけではなく、その場所が世界の物流やエネルギーの中でどんな役割を持っているのかまで見ていくと、ニュースの意味がずっと分かりやすくなると思います。
学んだことをアウトプットしよう