SpaceX「Starship」が切り拓く新たな宇宙時代
今日はSpaceXの「Starship」についてお話ししたいと思います。
9月28日、SpaceXは巨大宇宙船Starshipを打ち上げ、初めて地球周回軌道への投入に成功しました。しかも今回は、ただ宇宙へ行ったというだけではありません。26機の次世代Starlink通信衛星を軌道上に放出しました。
私は、この出来事は世の中を大きく変える可能性があると思っています。
それどころか、これから世界が「アメリカ一強の時代」へ向かっていく一つの大きな転換点になるのではないかと感じています。
海を制した国、空を制した国、そして次は「宇宙」
歴史を振り返ると、かつて海を制した大英帝国が世界の覇権を握りました。
その後、航空機の時代になると、空を制する力が軍事力や国家の力を大きく左右するようになりました。
では、その次は何なのか。
私は宇宙だと思っています。
今まで宇宙開発といえば、NASAなどの政府機関が莫大な国家予算を使って行うものでした。ロシア、中国、ヨーロッパも人工衛星を打ち上げることはできます。
しかしSpaceXがやろうとしていることは、単に「ロケットを飛ばす」というレベルではありません。
宇宙への輸送そのものを、政府の特別な事業から、民間企業が日常的に利用できる経済活動へ変えようとしているのです。
巨大なStarshipで150トン級を宇宙へ
Starshipはとにかく巨大です。
そして将来的には、150トン級という非常に大きな貨物を地球低軌道へ運ぶ能力を持つことが想定されています。
今回の飛行では、26機のStarlink衛星を実際に軌道上へ放出しました。
さらに重要なのは、SpaceXがStarshipを再使用可能な宇宙輸送システムとして開発していることです。
今回もSuper Heavyブースター、Starship上段ともに地球へ戻り、海上へ着水しました。
大きなものを大量に運び、宇宙へ行った機体を使い捨てにしない。そして将来的には打ち上げ頻度をどんどん高めていく。
ここが今までの宇宙開発とは全く違うところです。
一番大きいのは「宇宙へ運ぶコスト」の革命
私は今回のStarshipで最も重要なのは、やはりコスト革命だと思っています。
これまで宇宙へ物を運ぶには、1キログラム当たり何千ドルという莫大なお金がかかっていました。
ところがStarshipが完全再使用できるようになり、大量の貨物を高頻度で打ち上げられるようになると、そのコストを桁違いに下げられる可能性があります。
1キログラム当たり数十ドル、あるいは100ドル程度という世界が現実になれば、宇宙は政府や一部の巨大企業だけのものではなくなります。
一般の企業が「宇宙に設備を置く」ということを、本気で事業計画に入れられるようになります。
蒸気機関を変えたジェームズ・ワットと同じ
これを見ていて私が思い出すのが、産業革命のジェームズ・ワットです。
蒸気機関そのものは、ワット以前にもありました。
では、なぜワットがこれほど歴史に名前を残しているのか。
大きな理由の一つは、蒸気機関の効率を大幅に改善し、実用性を高めたからです。
その結果、それまで限定された場所で使われていた技術が、工場、鉱山、交通などさまざまな場所で利用できるようになり、産業革命につながっていきました。
私は、SpaceXが宇宙でやろうとしていることも同じではないかと思っています。
「宇宙へ行ける」ということ以上に、「圧倒的に安く、大量に、何度も行ける」ということが世界を変える。
ここが今回のニュースの一番重要なところです。
通信インフラも地上から宇宙へ
Starshipの実用化によって、次に大きく変わると私が考えているのが通信です。
これまで国際通信の中心は海底ケーブルでした。金融機関を含め、世界中で大量のデータが海底ケーブルを通っています。
ところがSpaceXはStarlinkを通じて、地球を取り囲むように人工衛星の通信網を作っています。
そしてStarshipなら、その衛星を一度に大量に宇宙へ運べます。
今回も26機を一度に放出しました。
こうなってくると、通信インフラそのものが地上から宇宙へ移る可能性があります。
さらに衛星同士をレーザー通信で結べば、地上の通信網だけに依存しない巨大なネットワークを作ることができます。
今までロンドンなどを中心に発達してきた国際金融インフラにも、大きな変化が起こる可能性があります。
次は「宇宙データセンター」
そして、もう一つ大きいのがAIです。
これまで何度もお話ししてきましたが、AIデータセンターの最大の問題の一つは電力です。
アメリカではデータセンターを建設しても、送電網や変電設備が足りず、すぐには稼働できないという問題が起きています。
AIはものすごい量の電気を使います。さらにコンピューターから大量の熱が出ますので、冷却にも膨大なエネルギーが必要です。
そこでSpaceXが構想しているのが、宇宙にAIの計算設備、つまり軌道上のデータセンターを作るというものです。
実際にSpaceXは、最大100万機規模の衛星からなる「Orbital Data Center System」を申請しています。
宇宙では太陽エネルギーを大量に利用でき、地上とは全く違う電力・熱管理のシステムを構築できます。
これまで「AIデータセンターをどこに建てるのか」「どうやって電力を供給するのか」と考えていたものが、「では宇宙へ持っていけばいいのではないか」という発想へ変わり始めています。
私は、これもものすごいパラダイムシフトだと思います。
軍事の考え方まで変えてしまうStarship
もちろん、この巨大な輸送能力は民間だけの話ではありません。
軍事にも大きな影響を与えます。
人工衛星、監視システム、通信設備、さまざまな軍事装備を大量に宇宙へ運べるようになれば、国の防衛戦略そのものが変わります。
これまで戦争を考える時には、海を支配する「シーパワー」、大陸を支配する「ランドパワー」という地政学の考え方がありました。
ところが宇宙まで活動領域が広がれば、その枠組みだけでは足りなくなります。
これからは「スペースパワー」、つまり宇宙を誰が制するのかが国家の力を左右する時代になる。
私はそう見ています。
「アメリカはもう駄目」という議論だけでは見誤る
アメリカについては毎年のように、「ドルが駄目になる」「アメリカは崩壊する」「政府債務が大きすぎる」という話が出てきます。
確かにアメリカは巨額の政府債務を抱えていて、国債の利払いも大きな問題になっています。
ですから経済面だけを見ると、「これは大丈夫なのか」と思う部分はあります。
しかし一方で、SpaceXのようなものすごい技術革新もアメリカから生まれています。
ヨーロッパ、中国、ロシアも宇宙開発をしていますが、民間企業がこれだけの規模とスピードで宇宙輸送の価格そのものを変えようとしているという点では、SpaceXの存在感は圧倒的です。
ですから私は、「アメリカには借金があるから、もう終わりだ」という一つの数字だけで世界を見るのは危険だと思っています。
低軌道が新しい巨大経済圏になる
これまで宇宙は、国家が研究や軍事目的で利用する場所というイメージが強かったと思います。
ところが今後は、通信、金融、AI、エネルギー、軍事、物流など、さまざまな産業が宇宙へ広がっていきます。
そうなると地球低軌道そのものが、一つの巨大な経済圏になります。
SpaceXはすでにStarlinkという巨大な衛星ネットワークを持っています。そして今度はStarshipによって、さらに大量の設備を宇宙へ運べるようにしようとしています。
つまりSpaceXは、ロケット会社というよりも、宇宙に新しい経済圏そのものを作ろうとしている会社と考えた方が分かりやすいかもしれません。
中間選挙とSpaceXを見る時に大切なこと
一方、アメリカでは11月3日に中間選挙があります。
中東戦争や物価、トランプ大統領の発言などをめぐって国内政治はかなり揺れています。選挙結果によっては株式市場も大きく動く可能性があります。
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