中東和平の鍵を握る「投資外交」とイスラエルの拡張戦略
1.イスラエルの「グレーター・イスラエル構想」
アラブニュースが伝えたのは、イスラエルのネタニヤフ首相が次の標的として「ヨルダン川西岸地区」を見据えているという分析です。イギリスの著名ジャーナリスト、クリス・ドイル氏によると、ガザでの停戦を繰り返す“オン・オフ戦略”は、アメリカを疲弊させる目的があるとされています。アメリカは今や「イスラエルのベビーシッター」と化し、イスラエル主導の動きに振り回されているという見方です。
ネタニヤフ政権が掲げる「グレーター・イスラエル構想(Greater Israel Project)」は、単なる領土拡大ではなく、戦略的な資源確保を目的としています。構想の中核には以下の三地域が含まれます。
- ガザ地区: 油田資源を有する地域。
- ゴラン高原: 雪解け水を含む重要な水源地。
- ヨルダン川西岸地区: 豊かな農作物の生産地。
ガザでの支配をほぼ確立したイスラエルは、次にゴラン高原や西岸地区、さらには北隣のレバノンとシリアへと軍事的圧力を強めています。レバノンやシリアはどちらも「グレーター・イスラエル構想」に含まれており、イスラエルの空爆はすでに断続的に行われています。最終的な拡張範囲は、エジプトのナイル川流域までを含むという壮大な構想とされており、地域の緊張が再び高まりつつあります。
2.世界的に広がる「イスラエル企業ボイコット」
現在、世界各地でイスラエルと関係する企業に対するボイコット運動が広がっています。食品大手ネスレをはじめ、グローバル企業の多くがイスラエル資本や支援を受けているとされ、その製品を避けようという動きが拡大中です。
イスラエルが潤沢な資金を持つ理由の一つには、カジノや娯楽産業、さらには売春ビジネスなどの国際的ネットワークが関係しているとの指摘もあります。世界の政治家や財界トップが“触れてはいけない領域”で繋がっており、その構造がイスラエルの影響力を支えているという見方も一部で根強く存在しています。
3.中東和平は「武力」ではなく「投資」から
一方で、中東では新たな和平の兆しも見え始めています。サウジアラビアの首都リヤドで開催された第9回「未来投資イニシアチブ(FII)フォーラム」では、「中東和平の道は武力ではなく投資にある」というメッセージが発せられました。
この会議には約600名の講演者と250のセッションが設けられ、政治・経済・技術・社会分野のリーダーたちが一堂に会しました。サウジは“投資を外交と安全保障のツールにする”という方針を打ち出し、経済発展を通じて地域の安定を目指しています。
特に注目されたのは、シリアとの国交正常化の動きです。長らく断絶していたシリアとサウジの関係が回復に向かい、さらにコソボとも関係改善が進んでいます。サウジはアラブ諸国の中心的プレイヤーとして、政治再編と経済発展の両面でリーダーシップを発揮しています。
4.中東経済の急成長と「平和投資」の現実
今回のフォーラムでは、総額600億ドル規模の新規投資契約が締結され、2017年以降では累計2,500億ドルを超える規模となりました。これらの投資は単なる利益追求ではなく、「経済による安全保障」――つまり、武力ではなく経済の結びつきによって戦争を防ぐという新しい発想に基づいています。
IMF関係者もサウジのリーダーシップを高く評価しており、文化・エンタメ分野でも日本のアニメなどが人気を集めるなど、地域の国際化が進んでいます。
5.経済が安全保障を変える時代へ
今、世界は「経済を武器にする時代」へと移行しています。トランプ大統領が進めた対中関税政策や、レアアースをめぐる米中交渉もその一環です。中国は世界のレアアース生産の大部分を占め、武器製造にも不可欠な資源であるため、各国は経済面での安定確保を外交の最優先課題としています。
中東地域でも、石油だけでなく、技術投資・再生可能エネルギー・観光などの新分野に力を入れ始めています。サウジアラビアが主導するこの「投資による平和構築」は、武力ではなく経済を通じた新しい国際秩序の実験とも言えるでしょう。
まとめ
イスラエルの拡張主義とサウジアラビアの投資外交。この二つの動きは、中東が今「戦争から経済へ」という大きな転換点にあることを示しています。どちらが新時代の秩序を築くのか――。
世界は今、武力よりも経済の力によって平和を築けるかどうかという「21世紀の試練」に直面しています。